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通信アナリスト・渡辺真由美のシンガポール <2>

1月6日
同僚のほとんどは朝飯抜きである。通勤途中、サンドイッチと飲み物を買って会
社のPantry倉庫室で食べる。朝食を家族と共に食べる人は珍しいそうだ。皆食べ
たいものを食べる。ちゃんとした朝ご飯という概念がないようである。バナナの
皮にくるまれた焼き飯の人、ココナッツミルクと魚汁で炊いたご飯の人、サンド
イッチの人、甘いケーキの人、豚曼の人、キムチ麺の人、お汁粉、豆乳等々いろ
いろである。私はCoffeeBeansというコーヒー店でテイクアウトした七面鳥パイ
を食べる。

ドリアンも食べてみたいが、残念ながら地下鉄や私がいる地域では持ち込み禁止
である。拳銃や麻薬と同じような扱いである。ドリアンはややこしい果物で、食
べたら水とアルコールは摂取してはいけなく、また血圧が高い人であれば健康に
支障が出る恐れがあるので、人によっては食べる前に医者の処方箋をもらった方
がいいかもしれない。


アジア通貨危機に直撃されたホテル産業は、大規模なリストラを敢行した。放り
出された労働人口は外食産業に就いた。そして自分の首を切った上司を相手にビ
ジネスをはじめて上司を食ってしまっている。
(写真)
正月の飾りつけ

1月8日
同僚のノラさんの家で夕食会があった。今日はハリラヤというイスラムの暦上の
正月である。ノラに言わせると、これは決して厳かな宗教的行事ではなくて政治
の季節である。親戚を訪問して情報収集し、金を融通してもらえそうなそうな人
とコネをつけるのである。ノラは民族衣装をまとったが、旦那さんは華僑なので
普通の格好をしていた。二人の子供は、おそろいの洋服を着せられた。両親がマ
レー人である場合は子供もマレー民族衣装をまとう。7人の来賓は会社で仲良く
している同僚達で、気がついたら皆中国系でマレー系はノラ一人であった。


1月13日      
昼は情報システム部の人と地下の食堂で200円のラーメンを食べる。青菜、竹
輪、がんもどき、オクラ、つくね、かに蒲鉾、すり身ボール、揚げ蒲鉾、揚げボ
ールから好みの具を選べる。食後はCarrefourで絞りたての果汁ジュースを買
う。レジには10人くらいの人が並んでいた。連れは、前に並んでいるひとの買い
物の合計額を算出し、さらに月給を推定しようとしている。人を値踏みするとは
こういうことなのか。中国人の間ではそんなことは普通だそうだ。
夜はラッフルズホテルがある通りを散策する。通りの西安餃子店に豚の尻尾汁、
豚の脳みそ麺の写真が陳列されていた。食欲が減退する。中国人の中でもこうい
ったものを食べられる人は少ないそうだ。脳、尻尾といった珍味は誰にでも調理
ができるというものではない。熟練した腕は、食生活の欧米化で継承されなくな
り、そして珍味の味を知る人も減ってきた。

屋台で餃子、豚汁、イスラム風えびせんといったものを適当に選ぶ。郷に従い、
好みに合わないえびせんは捨てる。どうせ食べ物は安いものだからと、ここの人
は庶民も金持ちも平気で食べ物を捨てる。
(写真)

シンガポール市内で漢方薬を
売るおじさん
1月14日
昼は営業の人と大挙して今人気のお粥屋におしかけた。お粥はさつまいもとご飯
を水で吹く。味付けはされていない。大きな鍋に入っているお粥をどんぶりによ
そい、そして10ぐらいある具を適当に取って自分で味を調整する。アサリの炒
め物、ザーサイとひき肉の炒め物、茶碗蒸、干しタラの炒め物、くたくたになっ
た青菜、揚げピーナッツ、湯葉の醤油漬、豚足、などなど。お変わりは自由であ
る。今日は平日なので400円で食べられたが、混み合う週末になると倍の料金に
なるそうだ。為替のようにお粥の市場価格も変動する。いや、本来値段というも
のは一定しているはずがないので、日本のように物の値段があまり上下しない市
場においては、消費者は必要以上に多く取られているということにはならない
か。
仕事のあと何をするかという話になった。シンガポールでは共働きが当たり前だ
が、女は家に帰ると母になったり、妻になったりと大変だと先輩がこぼしてい
る。男は独身でも既婚でも、仕事が終わればまっすぐ家に帰る。そしてお母さん
と長電話をするそうだ。

続きをお楽しみに