1月17日
同僚と上司とNoochという麺専門店に行く。Noochは東京の銀座に相当する
OrchardRoadにあるトレンドスポットである。凝ったインテリアに包まれて、タ
イ料理と日本料理の合作という凝った料理を食べる。日本料理は健康にいいし見
た目もいいということで人気があるが、唐辛子を何にでもかけるシンガポール人
には淡白すぎる。タイ料理の辛みを加えれば、ここの人の舌にちょうどよいよう
だ。
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(写真)
携帯電話のセールの幕(ブルネイ)
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夜は中華街チャイナタウンの片隅にある薄汚い食堂で餡かけ固焼きそばを食べ
る。臭いところで思わぬ美味を発見することがシンガポール滞在の楽しみとよく
言われる。私もあえて構えが立派なレストランを避けて屋根のない大衆食堂に通
っていた。おいしい物を毎日発見していた。しかし、考えて見れば安くておいし
いものなんてこの世の中では成り立たないはずである。よくよく聞いて見れば、
味の素をふんだんに使っているから美味しいのである。味の素に頼らなくても一
人前の調理ができる料理人は、200円の中華そばで食っているわけがない。
シンガポール人は貪欲に豊かな食生活を追及する。日本人もそうだ。でもシンガ
ポール人は、ワインが嫌いなら飲まない。トレンドに合わせてあえて我慢して飲
まない。強調性がなく、自分本位な快楽を追求する。出勤日の昼食は500円以内
で済ますという人が多いが、たかが500円の飯でもおろそかにしない。どこで一
番元が取れるか研究する。そして厳しく店を査定する。だからと言って店が腕を
振るうということには、残念ながらならない。店の方は最低のコストでそれなり
の水準の料理を大量に出すことを考える。食器には金をかけない。住宅地にある
小規模の店なんかは紙の皿で料理を出す。5ッ星レストランのような料理は期待
できない。しかし、それでも日本よりはるかに美味しい料理が食べられる。日本
の料理屋も化学調味料を使って料理の水準を保っているが、その水準はシンガポ
ールにはかなわない。
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CDMA(ワイヤレス・ローカル・ループ)
という技術を世界で初めて採用した
住宅街(ブルネイ)
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いろいろな人に、誰にも教えたくない安くてうまい店というところに連れてって
もらった。そして味覚というのは実に千差万別だと思った。人は自分の口に合う
ものを美味しいと感じる。そして料理ジャーナリストでもないかぎり、一生吟味
する料理の幅は狭い。一昔前は、福建人は福建料理しか、そして広東人は広東料
理しか知らなかったが、西洋化するにつれて趣向の幅は広がったとは言え。
私にとってはレモンやハーブを炊き込んだインドの炊き込み御飯レモンライスは
酸っぱすぎて食べられなかった。また甘ったるいクリームに溺れた魚介類という
のもつらかった。緑色のインドネシア風炊き込み御飯はココナッツミルクが入っ
ているというので最初は敬遠していたが、一口食べてみたら口に合い、常食する
ようになった。
私は会社のビルの地下街のクリスタルジェイドという中華料理屋をひいきにして
いる。食欲がなくなるとそこに行く。料金はその他もろもろの料理屋より1割高
めであるが、清潔であり、陶器の食器を使っている。ウエイトレスは制服を着て
いて客より立派に見えるが多くは英語ができない。ここの料理の種類は豊富でお
粥だけでも10種類を用意している。毎日通っても料理を全部味わうのに半年はか
かる。これまで食べたのは、香港風かけそば、蟹チャーハン、蛙入りのお粥、青
菜炒め、焼き豚、中国風焼き鶏、ドリアンプリンである。
同僚がシンガポールで一番安くておいしいレストランはゲイランという娼婦街に
あるよ、とささやいた。
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(写真)
水上マーケット。ボートは水上タクシー
(ブルネイ)
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1月22日
まさかシンガポールで原理に遭遇するとは思ってもいなかった。この国では共産
主義者とカルト教団は治安維持法下の取り締まりの対象となる。カルト教の信者
の疑いが持たれれば拘留される。にもかかわらず、統一協会は生息し、勧誘活動
をしている。
私は地下鉄で声をかけられた。学生らしい若者にアンケートに協力してほしいと
呼び止められた。地下鉄当局の許可を得た活動なのかと聞いたら、「許可ってな
んですか」と問い返してきた。それではっとした。日本の信者と全く同じ反応だ
ったからである。なおシンガポールでは、地下鉄構内での勧誘、寄付行為は禁じ
られている。また各宗派の施設には、施設周辺での寄付行為は禁じられ、法を遵
守しないものを警察に通報するという張り紙が掲示されている。公共施設での寄
付や勧誘行為がこのように厳しく禁じられていることを知らないシンガポール人
はいない。私に声をかけてきたのは地元の若者であり、アンケートは英語であっ
たが、もしかして彼らは日本人を狙っていたのかもしれない。
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(写真)
ブルネイ空港
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友人の嫁さんの家族が統一協会の被害にあったという。話を聞いて見た。嫁さん
一家は中国南部より半世紀前にシンガポールに渡ってきた。堅実で正直で社会を
ちょっと斜めに見るインテリ一家である。被害者は彼女の従兄にあたる20代の理
工学部の元学生である。3年前に入信した。繁華街でサークルの会合に誘われた
のが入信のきっかけだった。勧誘活動に熱中するが当局に摘発され、一年後には
大学を除籍となり、国外退去になった。現在マレーシアのジョホールバル市で他
の信者と集団生活をしている。家族との面会は許されており、母親がマレーシア
に年数回か訪れる。最近合同結婚式に参加し、台湾の女性と結婚した。
日本の霊感商法の話をした。皆、目をまるくしていた。シンガポールの原理は金
は取らないという。金銭的被害は全くないという。シンガポール人は神より金を
敬うから、莫大なお布施の要求は受け入れられないとのことである。
これについては私は疑問を持つ。中国系シンガポール人の金や富への執着心は私
からみると並ではない。その反面、迷信に振り回される。例えば中国人はヒスイ
が健康と幸運を呼び寄せると信じて疑わなく、偽物をつかまされても買い続け
る。私の友人の母がヒスイマニアであるために、家は火の車だそうだ。漢方薬や
易にのめりこんで、大金を失う人もかなりいるそうだ。一部ではあるが、迷信の
ために半端ではない金を出す人はシンガポールにもいる。ただ日本では詐欺とい
うのは一生一度か二度の一大事であるが、シンガポールでは日常が小さい詐欺の
積み重ねといった認識の違いがある。
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(写真)
ブルネイの国会議事堂。
一回も使われたことがない
国会がないから?
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シンガポールのような反カルト規制は、100%政府の都合のためにある。厳しく
信者の普及を規制することにより、治安は維持される。しかし、被害者を救済す
るという観点はないので、何かのきっかけで入信してしまった者は、運良く脱会
しても故郷にはもう住めない。
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