2000年一月よりシンガポールに赴任することになった。私の勤務先は米国の市場
調査会社である。このたび日本からシンガポールに転勤を命じられた。本社は米
国にある。私は日本から出向をしているわけではないため、手続き上、日本法人
を退職してシンガポールの現地法人に入社したということになっている。という
わけで赴任の際、日本の勤務先より退職金が手切れ金として支給された。
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36階の職場から見たシンガボール
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なお、日本の多くの人は企業のアジア統轄本部は日本にあるものだと思っている
ようだが、それは日系企業に限る。弊社のアジア統轄本部はシドニーにある。フ
ランスのメーカー、アルカテル社のアジア本部は上海にある。またシンガポール
で会う日本人の多くは、私の境遇を哀れんでくれる。何でも日系企業に勤めてい
ないと、こちらでの身分と将来が保証されないといった思い込みがあるようであ
る。何か悪いことをしたからシンガポールににげてきたという陰口もたたかれ
る。日本のグローバル化はまだまだである。
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シンガポールの伊勢丹
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会社が入居している44階立てのビルの一階にちょっとしたお惣菜屋がある。フ
ランスパンのサンド、中華曼、カレー風味の揚げぱん、揚げバナナパン、サラ
ダ、飲料水、そして握り鮨が売られている。同僚に日本人は朝食に鮨を食べない
と言おうと思ったが、サービス精神を発揮させてトロ、玉子、鮭の握りを取っ
た。お酢が効き過ぎ、しかも臭くていただけなかった。
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シンガポールのファッションショー
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このお惣菜屋を経営するのはCarrefourというフランスの小売業界の雄である。
1999年末、長崎屋を買収して日本に進出するのではないかと噂になった。また同
年、まだ混乱していたインドネシアに進出し、年内にスーパーを4店舗オープン
するという快挙を成し遂げた。業界ではCarrefourはスーパーを越えたハイパー
マーケットと呼ばれており、小売業者の鏡としてあがめられている。資本の力で
地元のスーパーの数倍の売り場面積を確保し、商品を卸に近い値で叩き売り、競
合スーパーを徹底的に干す。床面積を効率的に活用し、手が届かない天井にまで
商品を積み上げる。上を向いて歩かないと何が落ちてくるのかわからない。小さ
い子供にはヘルメットをかぶせてあげるべきであろう。またお酢が効きすぎる鮨
は、味より保存と効率を重視した結果だと、同僚が皮肉っていた。
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正月の飾りつけ
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昼に上司が鮨を食わないかと誘いに来た。断ったら就労ビザがもらえない。今日
現在、私は不法就労者であり、本日の労働は給与に加算されない。その代り、有
給が何日か増える。シンガポールでは、外国人が就ける職業は厳しく規制されて
いるが、マレーシア、フィリピン、インド、そして香港から出稼ぎ労働者は途切
れなく来る。メイドといった肉体労働職に加えて最近は看護婦や美容師といった
手に技術を持った有資格者も増えてきた。そして彼らを対象にした商売も順調で
ある。近年インドから渡ってくるソフトウエアプログラマーや労働者が増えてき
ているお陰で、インド人向けディスカウントストアが潤い、売上は高所得者を狙
った伊勢丹シンガポール現法を越えたとも言われている。しかし伊勢丹は、慣れ
ない土地の食べ物にへきえきしている日本人駐在員のライフラインであるので、
ビジネス上の理由で撤退を決めたら反対運動が起こるであろう。1月末には伊勢
丹では餅つきイベントがあり、そのために青森県から人を呼ぶ。
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