活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

円谷英二生誕100周年・滑り込み万歳!<1>



  今年は、ゴジラをはじめ数々の怪獣を生みだした、特撮監督・円谷英二の生誕100周年。
怪獣といえば、自衛隊! 国内では軍隊じゃないことになってるけど、海外のメディアは、ち
ゃ〜んと自衛隊を”日本軍”と表記することが多い。戦後すっかりタブーとなった軍隊を、時
に”防衛軍”とか”防衛隊”とか名を変えながらも、スクリーンやテレビ画面に登場させ続け
たのが、他ならぬ円谷英二である。
  奇しくもこのメデタイ年に、米国同時多発テロが勃発。湾岸戦争やオウム事件の時もそうだ
ったが、このような世界を揺るがす大事件が起こる度に、なぜか怪獣に思いを巡らせてしまう。
映画やテレビの世界では、究極の局地災害招来体である怪獣に対して、軍隊がそれなりに手際
よく対応策を講じるが、現実の日本はどうなんだろう、と考えずにはいられないのだ。

 ゴジラと初期ウルトラ・シリーズ(『ウルトラセブン』まで)は、私の原体験である。これ
らの映像の創造主は、いうまでもなく、偉大なる円谷英二。ついイケナイものに目が行ってし
まう私にとって、初代ゴジラはたまらない作品だ。核実験、被爆、破壊、放射能、殺りく、軍
隊、敗戦の傷跡、悪魔的発明、民間信仰、横恋慕……何でもアリのタブーの宝庫!核実験によ
って生まれたゴジラは、人類の原罪を負った被害者でもある。日本が誇る怪獣映画には、明確
な善悪の境界線がない。どうやら、幼い頃から、怪獣映画に潜む禁断の臭いをそこはかとなく
かぎつけ、そのうしろめたさに引かれていたらしい。遥か昔、子供の頃に、テレビで初代ゴジ
ラに出会った時、あまりにショックで、1週間ほど本当にゴジラが襲って来るんじゃないかと
心底おびえたものだった。

 モスラやバラゴン、キングギドラなどの怪獣や、いわゆる怪獣プロレス(怪獣同士の格闘を
マニアはこう呼ぶ)もこよなく愛しているが、私にとってのゴジラは、何といっても1954
年に製作された『ゴジラ』。そして、自衛隊が産声を上げたのも、1954年。まさに、運命
的一致というほかない!
  初期のウルトラ・シリーズも、今観ると技術的にはチャチだが、痛々しいまでのリアルさを
もって、常識を覆し、正義というものの危うさを容赦なく突いている。多くの怪獣や宇宙人は、
彼らなりの事情があって、人類を襲うのだ。時には、正義の味方であるはずのヒーローたちが
悪役になってしまうことさえある。ウルトラマンやウルトラセブンは、正義の使者ではなく、
正義を模索するヒーローといえよう。今観ても、いや、観れば観るほど奥が深くて、こんなも
ん、子供に見せんなよ、って感じ。これが、悪役を絶対悪として描く『仮面ライダー』と決定
的に違う点である。『ウルトラQ』、『ウルトラマン』にも、かなりグサグサくる作品がある
が、タブー好みの私は、どういうわけか、とくに『ウルトラセブン』に傾倒していた。

 『ウルトラセブン』の重苦しい雰囲気がたまらないのだが、実はつい最近まで、セブンこだ
わる自分が、謎だった。それが、米国同時多発テロ以来、あれこれ考えるうちに、ハタと気づ
いた!     (続く)