活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 3-8



 テロでマス・ヒステリアに陥った米国は、ますます独善的な性格を強め、帝
国主義的側面を肥大させた。

 事件から1カ月を経ずして、米国は、テロの首謀者と目されるウサマ・ビン
ラーディンをかくまっているとして、アフガニスタンのタリバン政権への報復
空爆に着手した。

 また、同時多発テロ以降、元来反戦志向の強いハリウッド関係者が、米陸軍
に協力し始めた。
 ハリウッドではまだ少数派とはいえ、『スター・ウォーズ』や『エイリアン』
のプロダクション・デザイナー、『地獄の黙示録』の共同ライター、『グリー
ス』の監督らが、米陸軍の科学者や研究者とともに、次世代装備の構想を練っ
ているのだ。
 2003年3月7日付の米紙『ワシントン・ポスト』によれば、9月11日直後、
米陸軍はハリウッドの人材を集め、今後起こりうるテロの想定シナリオを書か
せて、将来の訓練や準備の参考にした。
 その後、これらのハリウッド関係者は、飛行機で輸送可能なモデュラー戦車
や、情報をリレーするための昆虫のような形をした電子センサー、兵士の装備
を運んだり敵の動きを察知する無人装甲車など、映画の都の住人ならではの独
創的なアイデアやデザインを考案した。
 ハリウッドと軍がこれほど本格的な共同作業に取り組むのは、実に、第二次
世界大戦中の戦意高揚映画製作以来のことだそうである。

 そして2002年1月末には、ブッシュ米大統領が一般教書演説で、イラン、イ
ラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しで列挙した。

 こうした社会的風潮の中で製作された『エピソード2/クローンの攻撃』が、
独善的かつ傲慢な傾向を帯びるのは、当然のことなのかもしれない。
 とにかく、『スター・ウォーズ』サーガはアメリカの神話であり、米国社会
を映す鏡なのだから。見事に米国のムードを先取りし、スクリーンに映し出し
た、と感服するほかない。

 分離主義者を悪と決めつけたり、武力を否定する演説を削除してしまったり、
旧三部作で強調された自制の精神が失われたり、弱者の描写を怠ったり、下層
出身者をメイン・キャラクターから排除してしまったり、そして何よりもスト
ーリーを語るという映画の本質を見失ってしまったりと、その後の米国の暴走
をピタリと予言したかのような作品である。
 この映画の公開から数カ月後の2002年7月から8月中旬にかけ、ブッシュ政
権は、2億5000万ドルの巨費を投じて、米史上最大の軍事シミュレーション
「ミレニアム・チャレンジ2002」を行った。米兵1万3千人が参加し、3週間
に渡って繰り広げられた、この全米規模の実施・机上演習は、「ペルシャ湾岸
沿いの中東の軍事国」の解放を想定し、ハイテク空爆と特殊部隊を駆使した
「迅速かつ断固たる作戦」をテストした。

 そして9月、ブッシュ大統領は、先制攻撃論を唱え始める。
 さらに2003年3月、世界唯一の超大国である米国は、国際世論を無視して、
対イラク戦争に踏み切った。

 ”自由と独立の精神”を尊ぶ米国民は、自らの祖国を”帝国”と呼ぶことを
嫌う。しかしながら、イラク戦争開戦直前に、米誌『ニューズウィーク』が、
自省を込めて「傲慢な帝国」という特集を組んだ。
 今後、米国は自らの孤立と帝国主義を自覚し、その姿勢を改めるだろうか?

 『スターウォーズ』サーガ新三部作は、2005年に完結を見る予定である。そ
こでは、銀河共和国の崩壊と銀河帝国の誕生が描かれることになっている。
 アメリカの神話が帝国を完成させる時、米帝国主義は絶頂期を迎えるのであ
ろうか?


        Special thanks to Ms Hiroko Morohashi 
                     for her patience and excellent photo selection