実はアナキンは、連日悪夢にうなされていた。母親の身に危険が迫っている
夢で、アナキンはパドメとともに、母親を救うために故郷の星タトウィーンに
戻る。
奴隷としてタトウィーンで生活していた母親は、身請けされて農夫と結婚し
たが、1カ月ほど前に、凶暴な遊牧民の種族・タスケン・レイダーにさらわれ
ていた。
アナキンは、タスケン・レイダーの集落を探し出し、小屋に忍び込む。する
と、中には、傷だらけで縛られた母親がいた。母親は、息も絶え絶えに愛する
息子との再会を喜ぶと、アナキンの腕の中で絶命した。
怒りに燃えたアナキンは、タスケン・レイダーの一族を虐殺する。
この場面は、アナキンの攻撃性と、ダース・ヴェイダーへ変身していく原因
のひとつを描いたつもりなのだろうが、いかにも取ってつけたようで、不自然
きわまりない。
タスケン・レイダーは、なぜ母親を1カ月も生かしておいたのか? 奴隷と
して転売するなら、もっと元気なうちのほうが高く売れる。それとも虐待の対
象として、生かしておいたのだろうか?
どうも、アナキンの心がねじれる課程を説明するために、便宜的に作られた
シーンとしか、思えないのである。母親を救いそこね、その死を目のあたりす
るという不幸な体験が、彼の心をすさませ、ダース・ヴェイダーに一歩近づか
せた、という具合に。
不幸な生い立ちや境遇が人間を悪に向かわせるというのは、いかにも短絡的
な発想で、感心しない。
現に、アナキンの息子のルークは、両親がいなくても、健全に育っていった
ではないか。不幸な子供が、悪い人間に育つわけではない。しかしこのシーン
は、貧しい孤児が凶悪な人間になる、と決めつけているようでもある。
とくに、タスケン・レイダーの不可解な行動を考え合わせると、非常にわざ
とらしく、不快感さえ催す。
|