あまり市場に流通していないと思うので、一般的なライナーノーツのような記述をする。このライブのメンバーは、下記の4人で、服田氏がリーダーである。
服田洋一郎(G,Vo)
近藤房之助(G,Vo)
森田恭一(B)
小川俊英(Dr)
録音されたのは、1980年7月、下北沢のライブハウスである。
収録された曲は下記の10曲で、括弧に各曲を演奏した著名ミュージシャン(必ずしも曲を作ったミュージシャンというわけではない)を示す。
It Takes Times (オーティス・ラッシュ)
Ten Years Ago(バディ・ガイ)
They Call Me Lazy(レイジー・レスター)
Who(リトル・ウォーター)
Night Life(B.B.キング、ルーサー・アリスン、ウィリー・ネルソン)
I'm Gonna Leave You(ボビー・パウエル)
Kiddeo(ブルック・ベントン、ジョン・リトルジョン)
That's All Right(ジミー・ロジャース)
Part Time Love(リトル・ジョニー・テイラー)
Stone Crazy(バディ・ガイ)
このラインナップで、ライブの模様やCDの価値が理解できれば、かなりのブルース好きだろう。ブルース好きはそれほど多いとは思えないので、理解できる人はおそらくこのライブCDの存在を知っていると思うし、飽きるほど聴いているかもしれない。ストライクゾーンの狭い音楽の紹介は案外難しい。知っている人は何でも知っているし、知らない人はどんなに説明しても関心は持てないのだ。
ブルースロックは好きなジャンルだが、さすがにブレイクダウンは知らなかった。今でも現役でライブ活動をする近藤房之助氏からやっとたどりついた。そして、このCDの存在を知ったが、容易に入手できるものではなかった。しかし、ラインナップは期待をどんどん膨らませていった。元々、洋楽好きだったので、ほとんど知っている曲で、それらの曲を演奏したミュージシャンもわかっていた。一般的に他人の曲をコピーする演奏は、オリジナルを超えることができず、聴くに耐えないものが多いが、ブルースにはそれが当てはまらないことが多い。かつてはビートルズやエリック・クラプトンなど「白い」ミュージシャンが演奏して、世界中にブルースを広めていた。この現象にしかめ面をするオールドブルースファンは少なくなかったが、少なくとも当方はこのあたりがブルースを聴く原点になっている。本場の「黒さ」を表現できなくても、本場をリスペクトする姿勢は感じたし、大衆に伝えるというのは重要な仕事である。音楽に壁は不要である。良いものは、聴く人が聴けば良いと感じるはずである。
当方はクラシックも好きで良く聴いているが、クラシックを聴く人には、ほかのジャンルの音楽を一切認めない堅い人も少なくない。とても気の毒だ。きっかけはどんなジャンルの音楽でも、同じ音楽ならば「良い」ものを自分で感じとれるようになれなければもったいないと思う。入手は難しいかもしれないが、ブルースロックは初耳でも何らかのジャンルで音楽に「気づいた」人には「BREAK
DOWN LIVE」の良さはわかるはずだ。決して損をさせない1枚である。
ところで、当方はテレビをあまり見ないし、アニメはほとんど知らない。それでも何となく日曜の午後6時に放映されている「ちびまるこ」のテーマでBBクイーンズの「おどるポンポコリン」が流れていることは知っている。このテーマ曲は1990年くらいからしばらく採用されていて、その後ほかの曲に変わり、またポンポコリンに戻ったらしい。BBクイーンズはブレイクダウンの近藤房之助が参加するコミカルタッチのユニットである。おおむね冗談としか思えない音楽活動なのだ。それでも近藤さんはブルースロックの分野では本物なので、冗談でもそれなりにしっかりした曲に仕上がっている。大人は冗談を本気で受け取ることしかできないが、子供は冗談が本気である。子供の本気の感性が本物を気づかせたのではないだろうか。だからいつまでも子供の世代に支持され、そのためにテーマ曲を元に戻したのではないだろうか。
当方の自慢はギリギリでリアルタイムのビートルズに間に合ったことである。最初がビートルズだったので、それから派生するのは「ドアーズ」「ジミ・ヘンドリックス」など、30年以上経て今聴いても全く違和感のないすぐれた音楽ばかり。これらの音楽の良さは、決してロックというジャンルに固執させない広がりがあることである。ジャンルの壁を越えてあらゆる音楽に気づかせてもらえる。ポンポコリンも同様のきっかけになるだろう。近藤さんの存在に気づき、(間違って?)近藤さんの本業のブルースCDを入手すれば、その子供の音楽のスケールはきっと大きくなるだろう。
かつては、子供には子供の自治があり、子供の文化があった。子供が自分で考え、子供の世界を自分で渡り歩かなければならなかった。大人の自治にはある程度「ルール」があるが、子供の世界は自由度が高くて厳しい。良きにつけ悪しきにつけ「広がり」が大きかった。ところが、なぜか過保護な親が多くなり、半端に知恵のついた子供が自治を敬遠するようになり、自治は崩壊し、仕方がないので大人のルールに従うようになった。大人にはポンポコリンから広がりを期待することはできない。彼らはいずれポンポコリンを卒業するだけである。もったいない話だ。
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