活動通信アナリストの眼

通信会社国営化の潮流



ワールドコムが世界経済に与えた影響は果て知れないが、それは不正経理という人の
道を踏み外した行為を行なっていたことが人々の心の琴線に触れ、大きなリアクショ
ンを呼び起こしたからであろう。大手通信事業者の倒産、破産は珍しいことではな
く、昨年ではExodusという、企業向けweb hosting,housingでは先端を行く会社の事
業が行き詰まり、Global Crossingという、Carrier’s carrierとも呼ばれる事業者
向け帯域のリースという新しいビジネスモデルを実践していた会社も方向性を見失っ
た。業界のスター的存在だったExodusやGlobal Crossingの破綻より、ワールドコム
の社内問題の波紋がはるかに大きいのは、それは信用に関わる行為だったからであろ
う。また、アナリスト的に見ると、もし経理操作行為が売上にもおよび、架空の売上
を計上していたというなら、市場規模の試算に狂いが出、各方面で悪影響が出る。し
かし、ワールドコムは売上は正直に報告していたとされ、単にコストを資産に計上し
ていただけなので、これはワールドコム社のみの信用の問題に留まるはず。でも、世
界各地で株価の暴落は続き、市場はアナリストの思惑をまたまた裏切った。
実は業界内では特にワールドコム、Lxxxxxの勝手勝手な展開…買収、大規模施設の建
設、大量な社員採用、お金のかかった宣伝…は続かないと見られていたから、誰も不
正経理には驚いていない。ワールドコム社員の多くは「うちはリストラもやっている
普通の会社」と思っており、マスコミの報道で初めて不正経理の事実を知った。昨日
まで外務省という赤の他人の不祥事を糾弾しまくっていた彼等は、まさか今日になっ
て自分の会社が不信の視線にさらされることになるとは思っていなかった。

他の事業者は業界外からの圧力におののいている。マスコミもそうだが、各国の政府
監督機関は通信事業者の経営に念入りなチェックを入れ始めた。そして、ドイツテレ
コムの首脳の首が飛んだ。彼は「ワールドコムとは違って我々は堅実な道を行く」と
幹部社員に訓じていたそう。日本におけるドイツテレコムの存在は地味で、NTTや
ワールドコムと同じく第一種通信事業者の認可を受けているのにもかかわらず、その
認可で認められている自前の回線インフラ構築には手をださなかった。どちらかと言
うとドイツテレコムさんは事業を大きくするより、仮想敵のフランステレコムの動向
に関心を奪われていた感がある。

チェックに留まらず、管理も徹底しようと動いている行政機関もある。フランスで
は、フランステレコムの国営化が検討されているとのこと。(英Economist)電電公
社フランステレコムが民営化されたのはつい最近の1997年でNTTより1世代遅れてでの
ことだが、水面下ではフランス政府は数年かけて民営化への準備を重ねに重ねてい
た。それがまた振り出しに戻るのだろうか。


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