通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




8月2日
ベンチャー系某電話会社が国際電話料金を50%下げた。価格破壊を叫んで参入
し、IT業界に多いアンチNTT派と、話題性を求めるマスコミの支持を得た。しか
し表面の華やかさと実態の乖離があるのだろうか、私はこの会社は経営危機にあ
ると思う。
料金を下げれば集客効果があり、売上が増進するという見方がある。しかし、マ
ーケティング力、営業力、顧客サポート力があって集客ができるなら、高料金を
維持し、利益をプールすべきである。IP網を介した音声サービスの定着で近い将
来、電話料金は今よりもっと下がるのが確実な業界で何をあせっているのだろう
か。
巨人NTT、KDDI、日本テレコムを相手とする厳しい業界でこの3社の内1社でも
ベンチャー電話会社の挑戦を受けて料金を下げたら、この会社は終わりである。
また、料金を下げて宣伝、マーケティング、お客様窓口等の非営業間接部門に手
を抜き始めているなら、もう末期状態にあると言えるだろう。
米国のITベンチャー企業倒産数は今年5月にピークに達し、減る傾向にある。し
かし日本に行けば儲かるとばかりに、外資の新規参入が次々と続く通信業界では
これからが長い冬である。企業運営に不可欠な営業、マーケティング、顧客サポ
ート、ネットワークサポートといった体制を建てる時間がなく、しかし短い時間
で他社と差別化するにあたって価格破壊に頼るところが多く出てくるからであ
る。