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装輪自走装甲砲を欲しがる防衛庁のロマン




東長崎機関メンバー氏は、防衛庁が新規開発する市街戦兵装の研究会の講師とし
て7回ほど参加することになった。

いろいろなテーマ研究があった中で、
東長崎機関として、明確に反対したのが、この装輪自走装甲砲である。

しかし、所詮は、戦場屋の反対意見。こうして防衛庁案として、朝雲新聞に公表
されてしまった。戦場屋には防衛庁のことなんてわからない。防衛庁は、戦争な
んかしない平和なお役所だ、役所には役所の論理があるっていうことだろうか。

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防衛庁案では、搭載砲は105ミリ砲となっていた。
車体は、96式装甲車を基本にしたものを意識していた。

ただでさえ、装甲の防弾力に疑問のある96式装甲車。
105ミリ砲を搭載するゆとりがあるなら、装甲を強化すべきだろう。
装甲強化というのもかなりの重量になり、エンジンのパワーアップが必要にな
る。砲弾を搭載するゆとりがあるなら、情報RMA戦を可能にする指揮通信シス
テム、レーダー、ナビゲーションなどを搭載するべきだろう。

実戦見てきた者の立場として「市街戦に105ミリ砲で直接照準射撃するような
戦闘はする必要なし。間接照準射撃なら、120ミリ迫撃砲でよい。防衛庁の発
想として、どうしても105ミリによる直接照準が欲しいなら、既存の74式戦
車の近代化改造だろう」と、新しいもの好き君には嫌われる意見を述べた。

もともと、この構想には、疑問点が多くて、最初に提示された市街地戦闘構想か
ら、105ミリ装輪自走装甲砲を使用した上での市街地戦闘フォーメーションな
どと新規導入兵器装備の研究になっていた。

というわけなので、東長崎機関から「105ミリ装輪自走装甲砲は不要」と突き
つけられて、防衛庁案は、いきなり困ってしまった。

察するに、「105ミリ装輪自走装甲砲の導入」というのが、防衛庁の念願で
あって、その裏づけがほしいというのが本音のようだ。
日本の防衛屋は、ミーハーだから、米軍のストライカー旅団に影響されて、こう
いうものを欲しがるのは、今の日本軍人の姿だ。

それよりもまず「35ミリ機関砲と対戦車ミサイル持つ89式装甲車をちゃんと
使いこなしてみなさいよ」っていうのが本当のところだ。この89式装甲車でさ
えもてあましてて使いこなせないのに、装輪自走装甲砲とは・・・。
89式装甲車



だが、これの導入には大きな落とし穴がある。
105ミリ装輪自走装甲砲が導入されると、
日本陸軍(陸自)の主力戦車74式戦車が不要になるのだ。

どうも、戦車不要論に怯える戦車屋たちが「せめて、装輪自走装甲砲を」という
形で、自分たちの戦車屋としてのロマンを形に残したかったようだ。
しかし、装軌(キャタピラ)式である戦車の機動性の意味は大きい。
装軌(キャタピラ)を装輪にした時点で戦車屋のロマンは終わりだ。

74式戦車は、不整地も走れる装軌(キャタピラ)式なので、離島防衛用とし
て、移動砲台のごとく、1〜2個小隊ずつ、離島配備する使い方ができる。
話はズレてしまったが、1枚目の絵からすると、砲口は105ミリには及ばな
い。そして、この絵に対する説明文は一切なく、イメージ絵だけである。
やはり、「ロマン」でしかないということを自覚しているようだ。
だが、戦争などないと思ってる日本にとって、
防衛構想に最も大切なのは、「ロマン」なのかもしれない。

「防衛にかけたロマン」という元防衛庁職員による本もあるよ。